家庭用の製氷機を買うと、たいていの人が最初に迷うのがここです。「入れる水は、水道水でいいの?」。せっかく作る氷だし、おいしくしたいからミネラルウォーターを入れたくなる。浄水器があるならその水を使いたくなる。私も最初はそう考えました。
ところが仕様欄を読んでみると、メーカーの多くが正反対のことを書いています。「ミネラルウォーターや井戸水など、無殺菌の水は使用しないでください。塩素消毒された水道水のご使用をお勧めします」。1社だけの話ではありません。当サイトが毎日価格を記録している家庭用製氷機の商品ページを横断して見ても、同じ趣旨の但し書きが繰り返し出てきます。
結論を先に書きます。製氷機に入れるのは、常温の水道水が正解 です。理由が分かると、掃除の頻度もにおいの原因も、いっぺんに腑に落ちます。
メーカー自身が「水道水を使ってください」と書いている

まず、実際の記載を並べてみます。いずれも当サイト掲載機の仕様・注意書きにあるものです。
| メーカーの記載(要旨) | 指定している水 |
|---|---|
| ミネラルウォーターや井戸水など、無殺菌の水は使用しないでください | 塩素消毒された水道水 |
| 必ず常温の水道水(飲用)を使用してください | 常温の水道水 |
| ミネラルウォーター・アルカリイオン水・浄水器の水・井戸水などは雑菌が繁殖しやすくなり、健康を害する原因になります | 水道水 |
| ミネラルウォーターや井戸水、ジュースやコーヒーなどは使用しないでください | 塩素消毒された水道水 |
| 水タンクの水は毎日新しい水道水に入れ替え、使用しないときは水を捨ててください | 毎日入れ替える水道水 |
私はこの仕事柄、商品ページの下のほうにある小さな注意書きを読むのが習慣になっているのですが、ここまで各社の書きぶりがそろっているカテゴリは珍しい です。それだけ、水の選び方でトラブルが起きているということでもあります。
なぜ「浄水」や「ミネラルウォーター」がだめなのか
理由はシンプルで、塩素が入っていないから です。
水道水には消毒のための塩素が残っています。横浜市の説明にもあるとおり、塩素は水道水中に残留して消毒効果が持続し、雑菌の発生を防ぎます。蛇口から出た後もしばらく効き続ける、というのが水道水の大きな特徴なんですね。
一方、浄水器はこの塩素を取り除くための道具です。だから東京都水道局も、浄水器を通した水は残留塩素の消毒効果がなくなり雑菌が繁殖しやすくなるため、早めに使い切るよう 案内しています。ミネラルウォーターも同じで、開封後は早く飲みきるのが前提の飲みものです。
ここで製氷機の構造を思い出してください。製氷機は、常温の部屋に置かれた本体のタンクに、水を数時間ためたままにする機械 です。冷蔵庫の中ではありません。夏場の室温は30℃近くあります。
つまり 「塩素の抜けた水を、常温で、長時間ためておく」 ことになる。これは雑菌にとってかなり居心地のいい条件です。おいしい水を入れたつもりが、タンクの中で時間が経つほど不利になっていく。メーカーが水道水を指定するのは、味の問題ではなく 衛生の問題 だからです。
なお、井戸水がだめなのも同じ理由(無殺菌)です。水質そのものが悪いという話ではありません。
硬水で使うと水垢がたまる——地域による差もある
もうひとつ、水の「硬さ」の話があります。あるメーカーの説明にはこうあります。「硬水を使っている場合、1週間に1回自動洗浄機能を使ってください」「硬水は高カルシウムを含んでいるため水垢が付着しやすい」。
カルシウムやマグネシウムの多い水(硬水)を使うと、タンクや配管に白い水垢がたまりやすくなります。日本の水道水は全国的には軟水寄りですが、関東の一部や沖縄など、比較的硬度の高い地域もあります。
見分け方は簡単で、電気ケトルやポットの内側に白い粉状のものが付きやすい家なら、製氷機のタンクにも付きます。心当たりがあるなら、洗浄の頻度を少し上げておくと安心です。
- 白い付着物が気になる家 → 週1回の自動洗浄(またはクエン酸洗浄)
- とくに気にならない家 → 2週間〜月1回 を目安に
ジュース・お茶・お酒を入れてはいけない
これも仕様欄にはっきり書かれています。「氷を作るために飲料を使用することはお勧めしません。コンプレッサーの配管を腐食しやすいです」。
糖分はポンプや配管の内側に残ってぬめりのもとになり、酸は金属部品を傷めます。カルピスの氷やコーヒーの氷は魅力的ですが、それは製氷皿の仕事 です。製氷機は水道水専用の機械だと割り切ってください。
余談ですが、水以外を入れられるかどうかは炭酸水メーカーでもよく聞かれる話で、あちらは機種によって「水専用」と「ジュースもOK」がはっきり分かれます。気になる方は炭酸水メーカーで水以外を炭酸にできるかの記事もどうぞ。
いま価格をチェックしたいモデル
※価格は2026年8月5日時点の当サイト計測値。カードを押すと製氷機ランキングの該当モデルへ移動します。
毎日やることは3つだけ

難しいことはありません。日々の手入れはこの3つで足ります。
- 水は毎日入れ替える。前日の水は塩素の効果が落ちています。継ぎ足しではなく、いったん捨ててから入れ直す
- 使わないときはタンクの水を抜く。排水口から抜いて、内部をふいて、フタを開けて乾かす。数日使わないなら必須です
- 買ったばかり・久しぶりの1〜2回分の氷は捨てる。仕様欄にも「最初の1〜2回で製氷した氷は捨てましょう」「初めて製氷した氷はにおいがすることがありますが故障ではございません」とあります
私は家じゅうの家電を触ってきましたが、水をためる家電はどれも「使わないときに水を残さない」が唯一にして最大のコツ です。加湿器も、除湿機も、スポットクーラーも同じ。製氷機だけ例外ということはありません。
においが出たときのクエン酸洗浄
氷がなんとなく変なにおいがする、タンクの内側がぬるっとする。そう感じたら洗浄のサインです。手順はこうです。
- 電源を切り、タンクの水を全部捨てる
- クエン酸水を作る。水200mLに対してクエン酸小さじ1/2(濃度1%)が目安。粉が溶けにくいので、少しぬるめの水で溶かします
- 自動洗浄(セルフクリーニング)機能を回す。機能がない機種は、クエン酸水を入れて製氷運転を1回まわし、できた氷は捨てます
- 真水で2〜3回すすぎ運転。すすぎで作られた氷も捨てる
- 排水口から水を抜き、内部をふいて乾かす
市販の製氷機洗浄剤(クエン酸ベース)を使ってもかまいません。あるメーカーの記載では 水道水300mLに対して1袋(約10g) を溶かしてタンクに入れ、通常どおり製氷する使い方が示されています。
ここで大事なのは、洗浄剤の濃度をメーカーの指定より濃くしないこと。「効きそうだから多めに」は逆効果で、すすぎ切れずに味が残ります。
知っておきたい「製氷機ができないこと」
水の話とあわせて、買う前に知っておいてほしいことがひとつ。家庭用製氷機に保冷(冷凍)機能はありません。
貯氷カゴは氷を一時的に置いておく場所であって、冷凍庫ではありません。作った氷を入れっぱなしにすると溶けて水に戻り、その水がまた製氷に回ります。仕様欄にも「保冷機能はありませんので、製氷後は冷凍庫にて保管ください」と書かれた機種があります。
そして 溶けて戻った水も、時間が経てば同じ「古い水」 です。まとめて作ったら冷凍庫の袋へ移し、タンクの水は入れ替える。この流れにすると、氷の清潔さも保てます。
長く使っているとどうなるかについても、メーカーは正直に書いています。「温度・水質等の使用環境と経年変化により、水垢やカビ、サビ等が氷に混入することがあります。貯水タンク内は日常的にお手入れし清潔に保ってください」。裏を返せば、日常の手入れさえしていれば長く使える ということでもあります。
買う前に見ておきたい「水まわり」の3点
いま人気の5モデル(総合ランキング上位)
※価格は2026年8月5日時点の当サイト計測値。カードを押すと製氷機ランキングの該当モデルへ移動します。
これから選ぶ人は、スペック表の次の3か所を見ておくと後悔しません。
- 自動洗浄(セルフクリーニング)機能があるか:週1回の洗浄が現実的にできるかどうかは、この機能の有無でほぼ決まります
- 排水口の位置と抜きやすさ:底面や背面に排水口があると、水を残さず抜けます。「排水口が底部に位置しているため、簡単に水を捨てられて衛生的」と説明する機種もあります
- タンク容量と、家族の飲む量が釣り合っているか:容量約1.3L〜2.5Lが主流。大きいほど足し水は減りますが、使い切れない水が長く残る ことにもなります
設置のときは、平らな場所に24時間以上置いてから電源を入れる(内部の冷媒を落ち着かせるため)、延長コードやテーブルタップを使わない、アース線を取り付ける、の3点も守ってください。いずれも複数の機種の注意書きに出てくる項目です。
氷の透明さや製氷スピード、いまの価格と底値の位置は家庭用製氷機の選び方のページにまとめてあります。夏の飲みものまわりでは、ポータブル冷蔵庫やスポットクーラーと組み合わせて考える人も多いところです。
水道水を入れて、毎日入れ替えて、使わないときは抜く。製氷機は、この3つを守るかどうかで氷の味がまるごと変わる家電 です。おいしい水を入れることより、水を新しく保つことのほうがずっと効きます。
